2014/04/20

ニーチェ箴言散策集・私家版 (21)

[ニーチェ] ブログ村キーワード
ニーチェ箴言散策集
Friedrich Nietzsche
『ニーチェ箴言散策集』(2008.02起稿 2008.07脱稿 Mr. Anonymous)


今回140節の読みどころ
「韻」を踏むニーチェの機知の思わぬ意図。
全既刊号はカテゴリーからどうぞ。⇒⇒⇒

原文・翻訳からの引用は「報道、批評、研究目的での引用を保護する著作権法第32条」に基づくものです。ドイツ語原文は"RECLAMS UNIVERSAL-BIBLIOTHEK Nr.7114"、日本語訳は木場深定氏の訳に、それぞれ依ります。

)))140節(((
Rath als Räthsel. - 》Soll das Band nicht reissen, - musst du erst drauf beissen.《
謎のような忠告。――「紐が切れないようにするつもりなら、――君はまずそれに咬みつかなければならない。」(一部傍点あり) 
++++++++++

ドイツ語原文を見ますと、ここぞとばかり韻を踏んでいるのががわかります。'(nicht) reissen'と'(drauf) beissen'がそれです。面白いですねぇ。月の松島しぐれの白河。。。日本語のストイックな韻の踏み方(松島の「し」・しぐれの「し」・白河の「し」)とはだいぶ趣が違います。こちらは、山本譲二さんの大ヒット歌謡曲『みちのくひとり旅』(作詞 市場馨・1980年)です。気がつかれましたか?(笑)

このちょっとしたニーチェの機知を日本語に翻訳するのは、至難の業です。木場先生も諦められたようです。「プチ(っと)切れないように」「バク(っと)咬みつく」といった変形翻訳でもよかったかな、と個人的には思ったのですが。。。(くそまじめな編集者は嫌がるでしょうが)。

それはさておき。

「紐」と訳されている部分から、まず「紐帯」を連想し、そして「見えない紐=関係(男と男、女と女、男と女、集団内外・共同体内外・階級内外・国家内外など)」に引き伸ばしてみますと、どうもニーチェは、それぞれのアイテム間の因果関係ではなく、むしろ支配(関係)の強度を保つ方途について、思いを巡らしていたようです。

「謎のような忠告」。。。これはしたがって、一文字の子音の交替(こうたい)でその点をうまくハイライトできたと自画自賛したからこその書き出しだったのでしょう。聞き手の一瞬の虚をつこうとしたのかもしれません。悪戯半分、本気半分、といったところですので、あまりしかめっつらして考え込まないほうがいいかもしれませんね。

「そうせよ!」と強要しているのではなく、そういった「真理」もあるのではないかとサジェッションした、という程度に解しておくのが賢明だと思われます。

否、ソンナ解釈ハアマリニモ世俗的ダ!、と不満やるかたない方は以下をどうぞ(苦笑)。


ニーチェは、彼自身にのみその所有権を託した神たる超人、ツァラトゥストラの全身を解体するかのようにして、次のような表現群を、『道徳の系譜』第二論文のなかにちりばめています。そのうちのいくつかを、実験的につなげてみましょう。
「自立的な長い意志をもった約束をなしうる」「独我的個体」で、「うらなりの果実」、と喩えられるほどに、「自ら生身となったところのものについての誇らしい、全筋肉を痙攣させるような意識を、真の権力意識と自由意識を、およそ人間の完成感情なるもの」をもつ「支配者」でもあり、「約束をしたり自己自身を保証したりすることのできないすべての者に対し」、「足蹴の用意をし」「懲らしめの笞を用意する」ことによって、「自分がいかに立ち優っているかを、いかに多くの信頼、いかに多くの恐怖、いかに多くの畏敬」を「起こさせる」かを、「この健忘の化身」に知らしめる者である。
いかがでしょう。

これぞニーチェ!という感じがします。ドイツ語で読むとそこいらじゅう唾だらけになりますよ(笑)。

この「うらなりの果実(成熟した果実、とも)」の可能的存在への到達を目的因として、古代の残酷な「刑罰」は存在したのだ、とニーチェは考えています。

「うらなりの果実」は、『旧約聖書』「創世記」に登場するエデンの園にあった「木の実」に対抗して案出されたものと考えられます。

「謎」と言うほどではない箴言を、「謎」という言葉から書き始めたところが、また「謎」ですね(笑)。

もひとつおまけで、話はとびますが。。。

「咬(か)み」つかなくても「切れない」結び目、というものを人間の知恵はすでに生み出しています。主には、漁村から。

その結び方、または結び目を、「もやい(結び)」と呼びます。

ロープの結び方の要諦は、三つです。「結び易く、離れ難くも、ほどきも易し」となります。

その他、「いわし」や「かんぬき」、さらにはそれらを組み合わせた結び方もあります。そうそう、「なんきん」というのもありました。

また機会がありましたら、ビデオで実演してみましょう。

(2008年06月10日 記)

★ポチッと応援よろしく★
にほんブログ村 哲学・思想ブログ キリスト教へ

0 件のコメント: